カスケード制御
カスケード制御は、低速の外側フィードバックループの内側に高速の内側フィードバックループを入れ子構造で組み込み、外側コントローラの出力を内側コントローラへのセットポイントとして用いる方式である。内側ループの帯域幅は通常、外側ループの5〜20倍と高く設定されるため、バルブのスティクション、供給圧力の変動、アクチュエータの非線形性といった内側の外乱は、外側の制御変数に影響を及ぼす前に速やかに補正される。設計上の経験則として、内側の時定数は外側の少なくとも3倍以上速くする必要がある。たとえば外側(温度)の時定数が5分であれば、内側(流量またはバルブ位置)の時定数は100秒未満でなければならない。外側PIDから見ると内側クローズドループは良好な応答を示すため、内側アクチュエータが理想的であるかのようにチューニングできる。
典型的な産業用途として直火式加熱炉が挙げられる。外側ループが出口温度を制御して燃料流量のセットポイントを与え、内側ループが制御バルブを介して実際の燃料流量を制御する。カスケードなしの場合、供給圧力の低下による燃料流量の減少は温度センサが検出するまでに2〜5分の熱的遅れが生じ、大きな温度偏差をもたらす。カスケードを用いると、内側の流量コントローラが数秒以内に圧力低下を検出してバルブ位置を補正するため、温度変化は0.5〜1°C以内に抑えられる。さらにカスケードは外側ループの線形化にも寄与する。内側ループが操作変数を厳密に制御するため、バルブのヒステリシスや不感帯にかかわらず、外側ループは実質的に線形な内側サブシステムと相互作用することになる。この手法は、プロセス制御の圧力/流量系だけでなく、モーション制御における速度/トルク系や位置/速度のカスケードにも等しく適用される。