水の状態図
相図は、あらゆる温度・圧力の組み合わせに対して物質の熱力学的安定相を示す図である。水の相図では、三つの領域が一つの不変点、すなわち三重点(0.01 °C、611.7 Pa = 0.00604 atm)に収束し、固相・液相・気相が平衡共存する。液相-気相の境界(沸騰曲線)は三重点から臨界点(374 °C、218 atm)まで延び、その先では液体と気体の区別が完全に消滅する。臨界点より高温・高圧では水は超臨界流体となり、液体に近い密度とガスに近い拡散性を兼ね備えるため、超臨界水酸化やカフェイン抽出に商業利用されている。固相-気相の境界(昇華曲線)は三重点からより低温・低圧側へ伸び、ドライアイス(CO2)が、また 611 Pa 以下では水の氷が液相を経ずに直接気化できることを説明する。フリーズドライはまさにこの領域を利用し、0.006 atm 以下の減圧下で食品を保存する。
水の相図で最も異常な特徴は、固液境界線の負の傾きである。dP/dT はおよそ -135 atm/K であり、0 °C において圧力を高めると氷が融解するという、ほぼすべての他の物質とは逆の挙動を示す。これは、固相が液相より密度が高い一般的な物質では固液境界線が右上がりになるのとは対照的である。水の氷(氷 Ih)は液体の水より密度が低く(0.917 対 1.000 g/cm³)、水素結合ネットワークが分子を六方格子に固定してより多くの空隙を生じさせることによる。実用上の影響は大きく、スケートのブレードが圧力融解の水膜で滑るという俗説は成り立たない(体重では必要な圧力にはるかに届かない)が、プレートの沈み込み、氷河の流動、海氷の氷点降下の調節はいずれもこの密度逆転に依存している。約2,000 atm 以上では、水はより密度の高い氷の多形体(氷 III、V、VI)に転移し、固液境界線の傾きが逆転して 0 °C をはるかに超える温度でも氷が安定に存在できる。